さて、前回の続きです。
今回も前回に続き、リアルな実態を綴っていこうと思います。
前回は産業医の依頼先として、
①日本医師会など
②産業医業務も行っているクリニック
③産業医紹介会社
④ 産業医事務所
を挙げ、各々の特徴について説明しました。
ここで基本に立ち帰って、「なぜ産業医を選ばないといけないか?」という事を考えてみましょう。
従業員が50人以上となった事業所は産業医を置く事が法令で義務付けられており、同時に衛生委員会の設置などの義務も発生します。
これらの要件を満たさない場合は法令違反になるため、法令遵守のために産業医を選任する訳です。
ところが、一部の産業医紹介会社では、法令ぎりぎりのグレーな紹介案件の設定をしている会社がみられるので注意が必要です。
「産業医業務を2ヶ月に1回のみ」で謳っているケース。
この場合は、要注意。
産業医には労働安全衛生規則第15条で、「職場の作業場の巡視義務が毎月1回以上」と定められています。
労働安全衛生規則第15条の改正で、条件付きで2ヶ月に1回以上とする事が可能となりましたが
(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11300000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu/0000190999.pdf)、
巡視頻度の変更には事業者の同意が必要です。
厚労省の資料によると、「事業者の同意を得る際は、産業医の意見に基づいて、衛生委員会等において調査審議を行ったうえで行うことが必要」とされており、紹介業者が最初から「産業医業務が2ヶ月に1日のみのリーズナブルなプラン!」と銘打って良いものではないのです。
また、厚労省は「当該調査審議は、巡視頻度を変更する一定の期間を定めた上で、その一定期間ごとに産業医の意見に基づいて行います。」とも銘記しています。
一定期間ごとの見直しで「作業場の巡視は毎月1回に戻す必要がある」という産業医意見だった場合はどうなるのでしょうか?
この時点で紹介会社との契約内容が覆る事になりますよね…。
また、「作業場の巡視を2ヶ月に1回以上とする事を可能」とした法改正の背景を、厚労省は以下の様に記しています。
「過重労働による健康障害の防止やメンタルヘルス対策等が事業場における重要な課題となっており、産業医のより効率的かつ効果的な職務の実施が求めら れています。そのような中、これらの対策のための情報収集に当たり、職場巡視とそれ以外の手段を組み合わせることも有効と考えられることから、毎月、一定の情報が事業者から産業医に提供される場合には、産業医の職場巡視の頻度を2か月に1 回とすることを可能としました。」
つまり、「他の重要課題に労力を割くために、職場巡視の頻度を下げる事を認めますよ」という理由であり、
決して、「総稼働時間を減らして良いという事ではない」のです。
また、厚労省・労働局は「これらの業者への注意喚起」を出していますので、以下にリンクを貼っておきます。
https://jsite.mhlw.go.jp/kanagawa-roudoukyoku/var/rev0/0120/3984/20183267419.pdf
厚労省・労働局自らが注意喚起を出しているため、労災その他、問題が発生した際に言い訳は通じないでしょう。
何か問題が発生した際に、紹介業者が責任を取る訳ではなく、自社及びその産業医が責任を持つ事になります。その事を充分に理解した上で産業医を選ぶ事が大切です。
→To be continued(続く)...
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